眩-くらら- 著者:朝井まかて
まえまえから気になる人物がいました。葛飾応為、葛飾北斎の娘です。彼女の作品を見たとき、私は惚れてしまいました。そこで、彼女のことをもっと知るため歴史本などを検索したのですが、これといったものがない。あまり研究もされていなかったため一般書にはがっつり彼女のことを記した本は見つかりませんでした。そんなとき、この本を見つけました。
史実とフィクションが織り交ざった作品で、彼女の絵のように幻想的な作品です。まるで夢とうつつをさまよい、心地よいほろ酔い気分を味わえます。歴史が好きな方は、彼女の目を通して描かれる、父、葛飾北斎、の生活ぶりや雰囲気が楽しめると思います。史実としてもおもしろいのですが、私がもっとも印象に残ったのは素直に描かれた彼女の心です。主人公、葛飾応為、の絵師としての人生、女としての人生、葛飾北斎の娘という人生に翻弄されている彼女の姿は現代の女性にも共感できると思います。ページを読み進めるごと自分の中に葛飾応為が宿りはじめ、話を進めるごとに彼女の気持ちが自分の心に痛いほどしみて言葉では表現できないような心の動きを感じられると思います。