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感想・書評「花神、全3巻:司馬遼太郎」ネタバレ注意・主人公大村益次郎(村田蔵六)の名を知っている人はよほど歴史通ではないかと思います(レビュー)。 #読書


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タイトル「花芯、全3巻」。著者名「司馬遼太郎」。感想「不器用な男の生き様が胸をうつ」。

幕末、維新の英雄といえばパッと頭にひらめくのは坂本竜馬、もしくは西郷隆盛のような表舞台に立って華々しく活躍した人物でしょう。この小説の主人公大村益次郎(村田蔵六)の名を知っている人はよほど歴史通ではないかと思います。彼は見栄えもぱっとしない、性格もやや陰気で、絵になる人物ではない。

武士でもなく、百姓に生まれ、当時吹き荒れていた尊皇攘夷という思想に特にかぶれていたわけでもない。彼は僻地のしがない村医者だったのですが、まったく商売に不向きな性格で、村人が暑い夏の盛り挨拶がてら「お暑いですな」と言うと「夏は暑いものです」とぶっきらぼうに返す始末。万事がこの調子で無愛想なので、家業の医者が繁盛するはずもない。貧乏が衣を着ているような人物なのですが、間違いなく彼は軍事の天才で、桂小五郎に発掘され長州藩の軍司令官となって、倒幕軍の指揮を任されるまでになるのです。これだけ聞くと信念もなく、歴史の波に翻弄されただけの不甲斐ない人物のようにも聞こえますが、わたしが彼に惹かれるのはその身に起きたことを全面的に受け入れ、黙々と課せられた任務を果たしそして誰にも愚痴ひとつこぼさない、その静謐さです。ことさら自分を主張しようとせず、けれど人に容易く迎合せず、甘んじて孤独を受け入れる。始終相手の顔色をうかがい、空気を読むことに汲々としているわたしたち現代人には絶対に真似できない生き方です。益次郎はその生涯を通して人の称賛をうけることもなく、敬愛されることもないのですが、だからといって不幸だったとは思えない。自身に正直に生きた、哀しくも羨ましい生涯だったように思えます。題名の「花神」これは花咲じいさんのこと。幕末動乱の荒れた日本の大地に花を咲かせたのはこうした彼のような無名の多くの人物だったのかもしれません。