「風光る」(渡辺多恵子)激動の時代を生き抜く芯の強いヒロインが魅力です!
「風光る」は、江戸時代の新選組を舞台とした少女漫画です。物語はヒロイン富永セイが攘夷派の男に父と兄を殺され、復讐のために男装をして壬生浪士組(みぶろうしぐみ、のちの新選組)の入隊試験を受けるところから始まります。そこで父と兄殺害の際、命を救ってくれた沖田総司と再会し、なんとか協力を得ておなごとしての身分を隠しながら隊士として暮らし始めることになります。そうして武士(おとこ)として生きていく道を選んだセイですが、だんだん沖田にひかれていき…。
この作品は時代考証に特に作者のこだわりを感じます。私自身江戸時代に特別詳しくはないのですが、男装を疑われないために月代(さかやき、時代劇でちょんまげの男性がよく頭の一部を剃ってますよね…あそこです)を剃ってしまうヒロインの豪快さには驚きでした。初めて読んだ当時高校生だったのですが、表紙にいた少年がまさかヒロインだとは。前情報ゼロで読み始めたため全く気づきませんでした。そうでもしなければかわいらしい女の子であるヒロインが男集団の中で女と疑われずいるはずがない…作者のこだわりから確かな説得力を感じます。
また、武士となったヒロインが人を実際に殺めるまでの葛藤やそれを乗り越える強さも見どころです。
そんな結構ハードなテーマを描きつつ、コミカルで楽しい人間関係や日常も楽しめ、恋愛面でのドキドキも全く遜色ないのがこの作品のすごいところ。男装してるとはいえ、かわいらしい主人公が男集団で暮らしていてハプニングが起こらないはずがない。かわいらしくて努力家で、みんなに愛されるセイは男色(男性同士の恋愛)相手として求愛されたり、絶対おなごにちがいないと正体を暴こうと息巻く少年に追い掛け回されたり。周りから見てセイから沖田への想いは確か(男色カップルとして)なのですが、沖田はなかなか気づかない…そんな彼らが生きる時代を確かに感じることができます。
恋愛漫画は好きだけど時代モノは読んだことないな、という方はぜひ手に取ってみることをおすすめします。