「Nのために」 湊かなえ著 ベストセラーになった「告白」の著者の作品
幼馴染やアパートのご近所という縁で結ばれた仲間の話です。皆、それぞれに語りたくない過去があり、貧乏・家庭不和・虐待などの痛みを背負っている友人同士です。
それぞれの話に「裏」があり、登場人物みなそれぞれに語るのですが、微妙なずれがあります。
でもそれぞれの仲間は、相手を思いやり、なんとか問題を解決しようと努力します。仕掛けたり、芝居をしたりしますが、現実は悲劇へと進んでいきます。
仲間が行動を起こしたことで、悲劇が生じたとも言えますが、これで納得するしかないのでしょう。「Nのために」とは、いったいだれのため?に・・
読了すればわかってきますが、主人公たち、すべてのためにということではないでしょうか。すっきりとする終わり方ではないのですが、この後も仲間たちは、ともに過ごした時間を、そしておこってしまった悲劇を、忘れることなく、この後も生き抜いていくのであろうと、思うことができます。
悲劇と、過去のトラウマを抱えながら、でも生き抜いていく強さを持った主人公たちです。